真っ白のシーツ
塵ひとつない部屋
シンプルなカーテン
新鮮な黄色い花
少し古いファッション雑誌
春風
彼女はあと数ヶ月の命だ。
彼女はよく昔話をするようになった。
初めてのデート
初めてのH
海
北海道
穴の開いたコンドーム
・・・俺の知らない話ばかり。
「あのさ、誰との話?あ、俺の親父と?へぇ、そう。きつー。」
まぁいいのです。一応それどころじゃないですから。
彼女は視力も衰えてきたらしく、声としゃべり方がそっくりで
間違えてしまったらしいです。
彼女は日に日に細く弱くなっていく。
”花はすぐに枯れゆくからこそ、美しく尊い。”
そんな事を彼女に話した。
「腐りかけのバナナはおいしいものね。」
そう言って笑いながら抱きついてきた。
彼女は僕の前では決して泣かない。
と、親父は言ってた。
医者が彼女にできる仕事は延命。
副作用はとてもきついらしく、その時間は絶対に会ってもらえない。
隠し切れない赤色を見るたび泣きそうになる。
でも一番つらいのは彼女だと我慢をする。
ある日部屋に行くと何も無くなっていた。
彼女は無菌室に移動。
ガラス越しの笑顔
スピーカーを通した謝罪
もう僕は彼女に触れることもできなくなってしまった。
と思ってたが無菌室に親父が入っていって
彼女にキスをすると、奇跡的な回復。
今じゃ僕のお母さんで、弟もできました!